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逃げる勇気

逃げる勇気

著者: 和田 秀樹

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「逃げる」という選択肢を持っていないあなたへ
一年前、わたしは大きな決断をした。
長年、心血を注いできた仕事をやめたのだった。
その仕事は、中学生のときから夢みてきたもので、わたしは仕事のために自分を犠牲にすることをいとわず働いてきた。
しかし、年齢や経験を重ねるにつれ、給料とともに業務量も増え、責任も重くのしかかる。一生懸命だけが取り柄で、頼むのも休むのも途中で終わらせるのも苦手なわたしが、それに応えていくには、常に真正面から全力でぶつかっていくしかなかった。
度重なる人事異動の末、二年前には未経験の業務のリーダーを任された。わたしは大好きな飲み会の誘いを全て断り、趣味の音楽活動も遠ざけ、家庭のことも顧みず、ただひたすら仕事に向き合っていた。逃げたら負けのような気がして。
そんなゴールの見えない全力疾走の毎日の中で、ある日、ふと見上げた空の美しさが感じられなくなっていることに気づいた。ムダに晴れた空に訳もなく腹が立ったりもした。
そうした違和感を覚えつつも、とくに何かするということもなく、仕事最優先の日々を送っていた。そしてついに、積もりに積もった疲労からか、心身のダメージを自覚すると同時に疑問と不安が爆発するときが来た。
「あれ?仕事が好きで、仕事のために他のことを全部我慢してきたのに、体調崩したらその仕事さえできないなんて、わたし何のために生きとるんじゃろ?!」
そこで、わたしは初めて自分優先で生きてみることを思いついた。
そして、そのためにはいったん仕事から離れるしかない、と覚悟した。
しかし、自分の夢だった仕事をあきらめることはそう簡単ではなかった。自分自身を否定するようで怖かった。「置かれた場所で咲きなさい」を信条として生きてきたわたしに逃げるという選択肢はなかった。
が、とある深夜の帰り道、ぼんやり運転で対向車に吸い込まれそうになりながら、「これで明日は休めるかな」と思ってしまった瞬間、大切な家族や仲間たちの顔が浮かんでハッとしたわたしは、とにかく生きる方を選択することに決めた。
いろいろあったけど、今わたしは大きな窓からきれいな青空の見える図書館で、新しい世界に真正面から向き合っている。

最近、この「逃げる勇気」という本に出会った。
そして、「逃げる」ことも勇気ある選択肢のひとつだと気づき、あのときの自分の決断を少しだけ前向きに受け止めることができた。
本の中で、「逃げる」ことは「自分に合う環境に移る」「命と心を守る行動」なのだと著者は言う。「生きていれば、勝ちです」と。
この本のメッセージが、必要としている誰かにどうか届きますように。
(中央図書館・よねピー) 

世界のかわいいカップ&ソーサ―

世界のかわいいカップ&ソーサ―

著者: 明石 和美

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至福の一杯のために
私の至福の時間は、子どもたちの寝かしつけ後に飲む一杯の紅茶である。(日々睡魔に負けて、気付けば朝…の事が多いのだが…。)
仕事に育児に…とバタバタと過ぎる日常に、静かなリビングで一人、大好きな紅茶を一杯飲むだけで、日々の疲れが癒される気がするのだ。

紅茶を飲むカップにもこだわりたいのが正直なところだが、我が家ではまだまだ壊される可能性があるため、壊れにくいものや壊れても差し支えないものを使っているのが現状である。
本書を読みながら、こんなかわいいカップでゆっくり優雅に飲めたらなあ…と妄想に浸った。
子どもたちが成長して、食器が割れる心配がなくなったら、こだわりのカップで日々の疲れを癒したいと思いつつ、それは果たしていつになることやら…と未来にふける毎日なのである。
(中央図書館・みかん)

わたしたちが光の速さで進めないなら

わたしたちが光の速さで進めないなら

著者: キム・チョヨプ

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もしも、こんな世界なら、あなたはどうしますか?
もしも、
……美しく病気がない体に遺伝子を操作できたら、
……異星人と色で会話ができたなら、
……脳に他の生命が共生していたら、
……宇宙の果てまで人の生活圏が広がったなら、
……感情を商品として買うことができたなら、
……亡くなった人がデータ化して図書館に保存されていたら、
……たくさんのお金をかけて無敵の体を手に入れたら、
あなたはどうしますか? そんな七つの世界を収めた短編集。

SFは思考実験だ。それでも難しい話はなく未来や、別の惑星の世界なのに、どこかわたしたちの現実と地続きに見える。わたしたちとよく似た感情が描かれ、どこか哀しく、なぜかやさしい。

韓国で40万部突破、ベストセラーとなった作品集。
表題作の「わたしたちが光の速さで進めないなら」は宇宙港で待ち続ける老人の話だ。人生で選択を迫られたとき、後悔のなく選択できるのだろうかと考えさせられた。光の速さで何年もかかる場へ生活圏が広がったとしたら、人の感覚も変わることに気づかされる話でもある。

著者キム・チョヨプは韓国現代SF作家として、日本でも名が知られるようになった。作風はマイノリティーへのやわらかい眼差しと、社会で感じる疎外感や心の機微をすくいあげるように描くのが特徴だ。SFが難しそうだと感じる人にもおすすめしたい。
(中央図書館・カエアンのスカーフ)

植物たちのフシギすぎる進化

植物たちのフシギすぎる進化

著者: 稲垣栄洋

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いろいろある
いろとりどりの傘が揺れる季節
見慣れた景色に生まれた距離
翠雨が織りなす みずわ

なみうち
つながり
カタチをカエル

多種多様な植物の進化を紹介する本書

著者の稲垣さんは、
「違いは必要だから存在する」と語り、
真の意味の「多種」「多様」とは何か…
を問いかけます。

厳しい環境で
いろいろあることを讃えあい
進化する
たおやかな植物の姿に魅了されます。

渦く水面 描き見る
切なに過ぎ去り 多知仰日(タチアオイ)

ゆれるマナー

ゆれるマナー

著者: 青山七恵、戌井 昭人、著 小川 糸、 温 又柔、 恩田 侑布子、 白岩 玄、服部 文祥、松家 仁之、 宮内 悠介

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マナーはわきまえているつもり
マナーにちなんだごく短いエッセイが軽く読めるこの本、就寝前にぴったりである。
寝落ちする前に1篇をちょうど読み終える長さで、毎晩読んでいる。
だが、なかなか1冊が読み終わらない。
最近起きたできごとを、私もマナーにちなんで書き記したい。

先日、15年ぶりに結婚式に招待され、家族5人で参列してきた。
会場となる県南の某結婚式場は気後れしてしまうほどオシャレで格調高く、緊張した面持ちの我ら。
披露宴が行われる部屋にはシャンデリアが輝き、随所に凝った装飾も美しく華やかなことこの上ない。
いよいよ披露宴が始まった。乾杯の後は普段見ることも口にすることもない豪華な料理が次々と出てくる。
我々はおもむろにナイフとフォークを手にし、テーブルマナーにのっとりぎこちなく食べ進める。
もちろんどれもこれもおいしいのだが、私は着物で参列したために胃の辺りを何本もの腰紐できつく締めあげられており、思うように食事が喉を通らない。
しまった。着物なんて着て来なければ良かった。
しかし、こんなご馳走を食べる機会はもうないかもしれない、と必死に食べ進める。
ワンピース型のドレス姿で臨んだ娘は、悔しいくらい余裕の表情だ。
ふと見ると隣の夫が、ヒレステーキ肉を切り分けるのに苦戦している。
どうしたのだろう、こんなに柔らかいお肉なのに、と思っていると、娘がすかさず「さかさまだよ」と小声で冷たく言い放つ。
老眼が進んでいる夫は手元が良く見えず、なんとナイフの背でお肉を切ろうとしていたのだ。
気まずそうに夫はそっとナイフの向きを変えた。
そしてステーキと一緒に運ばれてきた、白い半透明でふわふわしたものに話題が及んだ。
夫に小声で、「これなんじゃろう?」と聞くと、
「大根おろしじゃがな。ステーキにかけるんじゃろう。」と夫。
ソースはかかっているが、大根おろしが付け合わせなのだろうと納得したところで、娘がぴしゃりと「シャーベットだよ」と言う。
口に入れると確かに冷たいシャーベットであった。
私たちは顔を見合わせ、黙ってシャーベットを口に運んだ。
華やかな宴が終わり、帰路、夫は聞こえないくらいの小声で言った。
「やっぱり白いご飯と漬物が一番じゃな」
私は黙って強く頷く。
披露宴会場では言いたくても言えなかった本心を、車中でそっとつぶやいた我々はマナー違反ではないだろう。
(中央図書館・はにわ)

黒部源流山小屋料理人

黒部源流山小屋料理人

著者: やまとけいこ

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「おいしいごはん」への憧れ
気付くと○○部の寮生活の食事風景、職業人のごはん、著名人の朝ごはんのような動画を見ている時がある。私はどうやら人のごはん風景に興味があるらしい。ということで山小屋でのごはん事情がわかるこの本は気になるところなのである。
ワンシーズンに食材の調達手段はヘリ輸送の2回ということで、限られた調理環境や食材で登山客や自分たちの食事をまかなわなければならないのだが、食材の活用法や保存方法のアイデアは日常でも生かせそうなものも紹介されていたり、失敗談は下界では見られない山の中特有のエピソードだったりである。紹介される料理の数々は著者の丁寧でやさしいタッチのイラストもあいまって食を大切にする気持ちがうかがえる。
体を動かした後に大自然の中でいただく食事、となればおいしくないわけがない。最近「おいしい」と感じたご飯を食べただろうか…?山に囲まれた土地に住んでいながら家と職場の往復でお花見も行かないインドアの私は自然を感じただろうか…?
よし、今度の休みは庭の草取りをした後にでも外でおむすびでも食べてみようとこころに誓うのである。(天気が良かったら)
(落合図書館・ジジ)

早口ことば遅口ことば

早口ことば遅口ことば

著者: 加藤俊徳

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ヨボヨボ脳を予防!…したい!
「言いたい言葉が出てこない」
「『えーと…』が多い」
「さっき聞いたことをもう忘れている」

「これらのことは、一度や二度は誰しもが経験しているでしょう」と著者は言う。
私の場合は、毎日だ。最近の私の物忘れの多さといったら…脳の回転数は下がる一方である。

本書によると、なんと口を動かす(音読する)と、右脳も左脳も活性化され働きが良くなるという。
「早口ことば」(=早口で音読する)と「遅口ことば」(=ゆっくり音読する)の脳回路はまったく違うという。それゆえ、この両方をやると、脳がまんべんなく活性化されるのだとか。

この本の良いところは、最初に音読が脳に与える効果とその理論を簡潔に述べ、その後はどんな言葉をどのように発すると良いかひたすら例文を挙げてくれているところだ。
脳の回転数の少ない私にとってはありがたい。
やってみようかしらという気になった。
例文の内容的からあきらかに上の年代をターゲットとされていることが類推される。

やってみると、滑舌が良くなり、若返った……気がした。
(久世図書館・N)

ゼラチン・寒天・アガーで作る、おいしい新食感 季節のゼリースイーツ

ゼラチン・寒天・アガーで作る、おいしい新食感 季節のゼリースイーツ

著者: 大越郷子

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愛しの寒天
お花見の時期はもう過ぎてしまったが、この本を見て子どもの頃の「お花見弁当」を思い出してしまった。
「え?お花見弁当にゼリー??」と思われそうだが、寒天のほうである。
私が生まれ育った地域(真庭市の某地域)では、「お花見弁当」には寒天は欠かせないものであった。岡山市から嫁いできた母は、初めて長男のお花見弁当を作った日、そんな風習など知るはずもなく、後から聞いて驚いたらしい。とはいえ私は三番目の末っ子なので、初回からしっかり寒天が入っていた。
子どもの頃、私は近所の友達5人とよくお弁当をもってお花見をした。3日連続ですることもあった。それぞれのお弁当にももちろん寒天が入っていた。無色透明だったり赤い透明だったり、サクランボが入っていたりと家によってそれぞれである。
私は寒天にはちょっとうるさく、3日連続のお花見弁当に「牛乳寒天に明日は八朔(はっさく)入れて!」などと、今思うとかなり面倒くさい注文をしていた。それこそ、この本ではじめて知ったのだが、ゼラチンは常温で溶けるのに対し、寒天は常温でも溶けないらしく、まさにお弁当には最適だったのだ。そしてさらに柑橘類を入れると、寒天は固まりにくいらしい・・・。
今更ながら母に申し訳ないことをしていたようだ。
罪滅ぼしに、便秘で食欲のない母の為、この本に載っていた梅酒のゼリーならぬ、梅ジュースの寒天を作ろうと思うのである。
(落合図書館・わらじ)

ビジネスマン超入門365

ビジネスマン超入門365

著者: 林 雄司

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タイトルだけで誤解しないで
新年度から早2週間が経とうとしている。この度、新社会人になった人も多いのではないだろうか。そろそろ職場の雰囲気に慣れてきたかな、という人におすすめしたいのがこちら。
タイトルだけ見るとお堅い本のように思えるが決してそんなことはなく、ビジネスの場において大切な知恵の数々が365日分ゆる~く収録されたビジネス書である。1日分が5行程度という短さで構成されており、絵本のように気軽に読むことができるのがポイント。
さらに、各トピックスにはクスッと笑える林さんの一言とヨシタケシンスケさんのイラストが描かれており、こちらも合わせて読んでいただきたい。
365日分あることにより、自分の誕生日や今日の日付など、目に付いたページを見るだけでも楽しむことができる。
ちなみにこの記事が掲載される4月19日は「用語:オーソライズ。ホワイトボードに自分の都合のよい意見だけ書いて、議事録にして送ること。」それに対する林さんの一言は、ぜひ読んで確認していただきたい。
(湯原図書館・ノサミ)

おだまり、ローズ

おだまり、ローズ

著者: ロジーナ・ハリソン 著

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信頼関係があってこそ
蔵書点検で館内の本を読み込んでいたときに見かけて、思わず手が止まってしまったこのタイトル。なかなか分厚い本ですが、読んでみたら期待を裏切らない内容でした。

「ウィットに富む」ってこういうものを言うのでしょうか。
20世紀前半のイギリスで子爵夫人に仕えたメイド・ローズの回顧録なのですが、メイドになる前、序盤の子ども時代の章からもう切れ味が鋭い。
型破りな子爵夫人のもとに来てからはさらに痛快で、その生活と二人のやりとりを垣間見ているような読者としてはニヤニヤしっぱなしです。扱いにくいと評判の主人を相手に、物おじしないどころか口答えして口論するローズもかなり型破りなのでした。

当時の貴族の生活を知りたいあなたにもおすすめですよ。
(蒜山図書館・888)

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