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31cm

31cm

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「贈り物」が問う、自由な社会とは
新聞やテレビで「(このエクセサイズは、この食品は……)認知症予防になります!」というセリフを毎日にように聞く。そのたびに、まあ、そうだけど… 「認知症になっても大丈夫な社会を」と言う方が、やさしい社会のような気もするんだよなあ、なんてちょっと思う。

そんな偏屈な私に向けて書かれているのではないか、と思うような本に出会った。

「病気で髪の毛がない子どもたちのためのウィッグをつくるために、自分の髪の毛を切って贈る」という活動をしているNPOの本。(タイトル「31cm」は、髪を寄贈する際に、最低限必要な長さ)

必要とする子たちのために、何年もかけて自分の髪を伸ばして、贈る。24時間テレビに出てきそうないいお話……たしかにそうではある。

しかし、このNPOの目標は「必ずしもウィッグを必要としない社会」だという。

それってどういうこと?

そう思って、読みはじめた。

この本は、自分の髪を贈る人、贈られる人、切る人(美容師さん)さまざまな人々のインタビューでできている。
ウィッグで前向きに生きられるようになったお子さんの語りからはじまるが、ページをめくっていくと、例えば、長年ウィッグを使ってきたが、ウィッグをはずしてまちに出て行くにいたった方がその気持の変遷を丁寧に語っていたりする。
全く一様ではない。

一人ひとりの言葉に、「そうだよなあ」といちいちうなずいていくうちに気づいたら一冊読み終えていた。単純な二項対立でものごとをとらえがちな自分がちょっと恥ずかしくなった。
まるで本の上で、哲学対話をしているかのようだ。
テーマは「自由に生きられる社会とは」だろうか。

とくに、容姿が気になる10代の若者なら、この本をどう読むだろうか。
いつか、この本を囲んで対話をしてみたい。

(中央図書館 カンチョー)

トゥルー・ストーリーズ

トゥルー・ストーリーズ

著者: ポールオースター/作

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信じる者が一人でもいれば その物語は真実にちがいない
どうも、くろです。
4月30日に作家のポール・オースターが亡くなりました。
ここ数年で、若い頃から好きだった作家やミュージシャンが亡くなるようになってきました。そのたびに「ああ、とうとうこの日がきてしまったか…涙」となります。さみしいもんです。
私の初ポール・オースターは、本ではなく映画でした。彼が脚本・監督をつとめた「スモーク」。米国人俳優ハーヴェイ・カイテル好きの先輩からのおすすめでした。ブルックリンの街角にある煙草屋を舞台に、店主(ハーヴェイ・カイテル)によるクリスマスのちょっといい話かと思いきや、嘘みたいなほんとの話とほんとのような嘘がごちゃごちゃ込み入って、そんな物語。大好きだったなー。また観たくなりました。
彼のエッセイ集『トゥルー・ストーリーズ』でも「スモーク」を彷彿とさせる「嘘みたいな本当の話」が語られます。
そうそう、彼がラジオ番組の企画でリスナーに呼びかけて集めた「作り話のような本当の話」をまとめた本『ナショナル・ストーリー・プロジェクト』は、ちょっと前のこのコーナーで、ヨラコさんが紹介していた『嘘みたいな本当の話』の元ネタなのでした。
(中央図書館・くろ)

ゾンビ3.0

ゾンビ3.0

著者: 石川智健/作

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「3.0」? そういうことなのか・・・
「ゾンビ」といえば、マイケルジャクソンのスリラー(古い?年齢がバレてしまう)、ゲームのバイオハザード、ドラマのウォーキングデッド等、様々な媒体に登場します。
 近年、「ゾンビもの」が流行っているようで、私も映画やドラマを見たりゲームをプレイしましたが、どうしてゾンビになるのかについては、いまいちはっきりしていません。
 ゾンビを一躍有名にしたロメロ監督の映画では墓から死者が蘇えりましたが、最近は何らかのウイルスに感染してゾンビ化するという設定の作品が多いように思います。
 しかし、この作品は「3.0」とうたっているだけのことはありまして、医学的・科学的な見地からゾンビ化の原因が解明されていきます。
 常々「どうして死んでいるのに動けるんだ?」と気になってしょうがない方、その答えを見つけるため、ご一読するのもいいかもしれません。
(中央図書館・SHITUCYO)

地震・台風時に動けるガイド

地震・台風時に動けるガイド

著者: 辻直美/作

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護りたい人がいるあなたへ
この本は、常日頃「なにかしなければならない」と思いつつ結局なにもできていないと思っている方、「何から始めればよいのかわからない」と漠然とした不安を抱え、しかし結局、防災準備が進まないという方に向けて書かれている(それはつまり、私のことだ)。

さらに、この本のテーマは「自分のための防災から大切な誰かを護るための防災」(はじめに)である。たとえば、家庭で介護をしている方に向けて、もしも被災さいたら何が重要かについても詳しく具体的に書いてある(もうすぐ我が家の親も介護が必要になるので助かる)。

著者は、看護師として活動中に阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件の救援を経験。それを機に「災害レスキューナース」として被災地での活動や防災啓蒙活動をしている。著者は多くの本を出しているが、この本はとくにおすすめ。新聞でつくる防寒具や、身近なもので簡易トイレをつくる方法などが、写真やイラストで説明されている。そして、「気負わず少しずつ始めれば良い」と、具体的な対策を教えてくれる。「まずは1か所、滑り止めシート1枚からおいてみましょう」と。( 久世図書館・N )

星ぼしでめぐる ギリシア神話

星ぼしでめぐる ギリシア神話

著者: 百々佑利子/作

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そら
蒜山図書館の閲覧スペースからは、四季折々の蒜山三座が見えます。
芽吹いた新芽と葉のグラデーションは、今だけの景色。
そして、三座の周りには、そらが広がっています。

 そら と平仮名で書かせていただいた理由は、
今、自分が見ている そら は、
空なのか、
宙なのか、
どちらでもない そら なのか…
はっきりと決めることが出来なかったからです。

辞書で言葉の意味を調べ、
専門書を読み。
小説。
エッセイ。
写真集。

それぞれの作り手の そら の見方に触れ、迷いは深まります。

深まった迷いの中、
散らばっていた見方の間に、別の見方が納まり、
繋がりに少し気がついた。

それが、今の私の そら です。

今の そら になるまでに出会った本の中で、
星ぼしでめぐるギリシア神話は特に印象に残っている一冊です。

作者、百々佑利子さんは、

ギリシア神話は、そらんじられ、うたわれ、
文字に書き記され、書き写され、
そのたびに細部が書きこまれ、あたらしいことがつけくわえられ、
印刷して広まりました。

と書いています。

文字になる前のギリシア神話を聞いた人が見た そら は、
どんな そら だったのでしょう。

優しい声で聞く、寝る前のおはなしの そら だったのでしょうか。

厳かな祈りの歌の そら だったのでしょうか。

当時のままに体験することは出来ませんが、
遥か昔の人が見た そら も、今の私の そら の一部として、
残してゆきたいです。
(蒜山図書館・ミトン)

季節の不調が必ずラク〜になる本

季節の不調が必ずラク〜になる本

著者: 瀬戸佳子/作

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花粉症デビューしました!
数年前から春が近づくと「なんだかくしゃみが増えたな」「ちょっと目に違和感があるな」と思ってはいた。でも受け入れたら余計に悪化しそうで、頑なに気のせいだと自分に言い聞かせていた。
けれど今年の春の目のかゆさにはもう我慢できなかった。かゆい。私はついに花粉に屈したと認めざるをえなかった。

まだ症状が軽めな今のうちになるべく手軽にできる対策はないかと思っていた時、ゆるめなタイトルに惹かれて手に取ったのがこの1冊。
漢方や薬膳の視点から教えてくれる「養生」の仕方は、日々の生活に取り入れやすいものがいっぱい。
体にいいと思ってやっていたことが、実は季節の不調と相性が悪かった……なんてこともちらほら。
これからの時期に心配な夏バテや熱中症についても、この本を片手に早めに養生していこうかな。
(蒜山図書館・888)

ふわふわ

ふわふわ

著者: 安西水丸、 村上春樹/作

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村上ワールド
この題名と表紙を見ると、かわいいネコが出てくるラブリーな絵本だと思うことだろう。
しかし、作者は「村上春樹」である。
よい子のみんなは、最初のページを開いた途端、軽く裏切られたと思うに違いない。
作者の、「猫」という生き物に対する愛が哲学的に語られている。
村上節炸裂の比喩表現が多用され、あっという間に猫と作者の濃密な世界に引き込まれていく。
そして絵は、作者と長年親交があった安西水丸氏。
捉えどころのない線がのたくっている、だれでも描けそうで描けない絵が、深く考察する必要のある文と相まって、村上ワールドを完成させている。

そう。
私はだれがなんといおうと、村上春樹が好きなのだ。

(北房図書館・はにわ)

あしなが蜂と暮らした夏

あしなが蜂と暮らした夏

著者: 甲斐信枝/作

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身近なものを見つめ続ける
あれはまわりの山々の緑が濃くなってきた、初夏のころだったでしょうか。
仕事を終え、図書館から車に向かう途中、ふと目の端に見慣れないものが目に入りました。立ち止まって植木の方を見てみると、ちょうどとっくりを逆さにしたような茶色い物体が木にぶら下がっているではありませんか。ここは図書館員、調べてみるとどうやらハチの巣であることが判明。ふむふむと納得しながらも、殺生が苦手な私はそっとそのままにしておくことに…
そんな思い出が本書を手に取ったきっかけになっておるのですが、自然を深く深くつぶさに観察し、言葉に表されているこの本は絵本作家として有名な筆者の挿し絵がなくとも、あしなが蜂の命の営みが頭に思い浮かべられます。そして、筆者の観察対象への愛情はその最後までを見届けられる内容からもうかがうことができます。
わたしが調べるだけで満足してしまったあのハチの巣はどうなってしまっただろう。もしかしたら壮大な物語を逃してしまったかもしれない…。
( 落合図書館・ジジ )

私は負けない

私は負けない

著者: 村木厚子/作

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あの事件、気になっていました。
雑誌をめくっていると、村木厚子さんのインタビュー記事が載っていた。その時、私の脳裏に蘇ってきたのが、2009年「郵政不正事件」で村木さんが逮捕されたときのニュース映像だった。厚生労働省の局長という高いポストに女性がついていたことが当時は珍しく、また優しそうなどこにでもいるお母さんに見えたため、印象に残っていた。その後、彼女は無罪を獲得する。あの事件は何だったのだろう。事件の詳細を知りたいと思った。
この本は、逮捕・拘留されてから無罪を勝ち取るまで、彼女が感じていたことが丁寧に書かれている。取り調べでは、無実であることを話しても検察官は取り合ってくれず、検察側に都合の良い調書に書き換えようとする。圧倒的に検察に有利な状況で、関係者が次々と虚偽供述に追い込まれる中、勝てなくても負けないという精神で彼女は戦う。
読みながら感じたのは、なんて強い人だろうということ。まず拘留初日からしっかり睡眠をとっていたことに驚いた。また、検察の度重なる卑怯なふるまいに対して、「負けるものか」と闘志を燃やし続けている様子が印象的だった。親近感が湧いたのは、本を読むのが好きらしく、164日間の拘留では大量の本を読むことで気持ちが落ち込まないようにしていたことだ。
事件の流れだけなら、ネットのウィキペディアなどで知ることができる。しかし本を読んだことで、当時何を感じていたのか、どのように戦ったのか、より深く知ることができた。
(美甘図書館・かも)

かみきこうち

かみきこうち

著者: 神木隆之介/作

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出会いに感謝
大学生の頃から神木隆之介くんの大ファンの私。
あるとき、神木くんの写真集お渡し会が広島で開催されることを知り、友人と一緒に電車を乗り継ぎ、隣県へ向かった。
会場で長い行列に並ぶこと1時間、とうとう迎えた自分の番。私は神木くんのまばゆいばかりのオーラに圧倒され、頭が真っ白に。あらかじめ友人と練習しておいた会話の全てが吹っ飛んだ上に、神木くんから写真集を受け取った私は「ありがとうございます」を小声で繰り返しながら出口のほうへはけるしかなかった……(私の持ち時間はまだあったのに!!)。
それでも、一瞬でも憧れの人に会えたこと、この小さな思い出を糧にこれからの人生を生きていく。ありがとう、神木くん。

……といまでも思っているわけだが、その理由だけで本書をとり上げたわけではない。本書はNHK連続テレビ小説「らんまん」の主人公を演じた神木くんが、「牧野富太郎を知りたい」という思いから舞台となる高知を訪ねている。エッセイ、写真集、ガイドブックの3つの要素を兼ね備えたビジュアル紀行ガイドとなっている。
地域に根差して活躍する方々との対談、現地にいるかのように感じられる豊富な写真、牧野さんをモチーフにしたお土産や高知のおいしいお店など、厳選されたおすすめ情報がたっぷり紹介されている。
高知の豊かで懐深く、新旧の魅力の数々を感じることができる。読み終えて私も高知に行きたいと思った。
「神木くん」「高知」「らんまん」のそれぞれのファンが満足するのは当たり前だが、むしろそうでない人にぜひ読んでいただきたい。
神木くんの人柄、高知の伝統や風土、牧野さんの残したものなど、自分の知らなかった高知に出会うことができるだろう。
(湯原図書館・ノサミ)

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