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いちばんていねいな、基本のデッサン

いちばんていねいな、基本のデッサン

著者: 小椋 芳子

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光と影
実りの季節
黄金色の水面が秋風に揺れ
祝福の音を奏でます。

長く伸びる影 ふたつ

隣の影
早く 遅く

足下の影
早く 遅く

見えないものを みつめる
見えないように みつめる

こちらを見た影に
ふと顔を上げると

輝く視線に出会います。


残しておきたいことに出会ったとき
画用紙に物語を描きたくなります。

光と影を切り取って
自分にだけ見えるように…


隣り合う影

触れる

重なる

うれしい戸惑いに影が揺れます。

(蒜山図書館・影絵)

命を守る防災ふろしき

命を守る防災ふろしき

著者: よこやまよしえ

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やるな、ふろしき
先日法事があり、お供えに箱入りの桃を持って行くことにした。
桃はとてもデリケートな果物であるがゆえに、大事に運ばなくてはならない。箱は横に広く、手持ちの紙袋では平らな状態で運べるものがなさそうだ。
どうしようか思案した結果思いついたのが、ふろしきである。
我が家のタンスに確かたくさん眠っていたはずだ。ナフタリン臭い引き出しを開けると、まぁ~あるわあるわ、大小色とりどりのふろしきが。見るとそれらの隅っこには、きっちりとマジックや縫い取りで苗字が書かれている。几帳面だった亡き義母らしい仕事。しばし感慨にふける。
たくさんのふろしきの中から大きさと色味がぴったりな1枚を選び、桃の箱を包んでみた。すると、なにやらとても格調高い雰囲気が漂っている。
やるな、ふろしき。

この原稿を書いている今、まさに台風が日本に接近中である。
防災グッズの中にふろしきを入れることにしよう。
(北房図書館・はにわ)

京都ものがたりの道

京都ものがたりの道

著者: 彬子女王/作

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京都の文化や歴史を知れる観光本かと思いきや…
以前の職場にいた頃たびたび【京都行きたい病】を発症し、最寄りの駅からひたすら歩いて神社仏閣を巡っていた。時には母を連れて京都の美味しいものを食べに行った。
そんな私の目に〈京都〉〈彬子女王〉の文字が飛び込んできて「彬子女王?なせ京都?」と思わず本を手に取った。
仕事で東京から京都へ引っ越しをされて久しく、二駅分くらい歩くことは日常茶飯事という側衛さん泣かせの彬子女王殿下。殿下は散歩が趣味ということもあり、東西と南北の通りが碁盤の目のように作られた京都の街を歩いてみて気付いたこと、見つけたものを京都の文化やものがたりと共に紹介している。殿下の日常も織り交せながら書かれており、スッと人の輪に入っていかれるところも読んでいて面白い。
〈新町通(しんまちどおり)〉の祇園祭の章では、近年は本来の姿に戻ったのだが、一時期交通規制の諸事情で本来2回あった祗園祭の山鉾巡行が1回になったとのこと。その際本来の祭の中心は神輿渡御であるのに、お神輿を見て「これも祇園祭なのか?」と聞いている方がおられ、本来の姿を知っている方が少なくなり〈少しさみしい気持ちになったものだ〉とあった。
そうか、日本の文化や歴史を大切に思われるからこそ幼稚園の子供たちに日本文化を伝えて行くという活動を始められたのかもしれないなと感じた。
それにしてもこの行動力はどこから来るのだろうか?
生まれてからずっと警察の方と一緒だったという殿下。遊んでくれたり、時には叱ってくれたり危険な時には身を挺して護ってくれる、ある意味家族以上の存在だったそう。京都に引っ越して来られたからこそ、その方々の仕事の重要さを今まで以上に知ることになり、〈私のために命を懸けてくれる人が全国にいる。その人たちに「ああ、この人を護れてよかった」と思ってもらえる存在であるために自分はどうあるべきなのか。それがようやく心の中におちてきた〉と。
この一文で京都歩きに適した観光本で終わることのない、大切なー冊に出会えた気がした。
(落合図書館・わらじ)

ワンルームワンダーランド

ワンルームワンダーランド

著者: 落合 加依子,佐藤 友理/作

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そこにいる
この真庭市立図書館ホームページの「おすすめの1冊」で順番が回ってくるにあたり、人に読まれるものを書くということに意識が向くようになった。毎回、もう書けない…、という状態に陥ってしまうのだが、そんな時は他の人が書いた文章を読んでしまう。
この本はひとり暮らしのワンルームにまつわるエッセイが読める、しかも物書きを仕事としていない、自分に近い人のエッセイ、それも100人分。何か得ることができるかもと手に取ってみた。
部屋全体の写真とお気に入りのものの写真、それとエッセイ。シンプルな部屋から物にあふれた雑多な部屋。それぞれの部屋にその人だけの暮らしが写真とエッセイから感じられ、全く知らない人なのに親近感が生まれてくる。
子どもの時に友だちと筆箱を見せ合ったようなそんなわくわく感。
このコーナーにも、そんなわくわく感を感じていただけていればよいのですが・・・
(落合図書館・ジジ)

コラージュ川柳

コラージュ川柳

著者: 淀川テクニック/作

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「コラージュ川柳」?
「コラージュ川柳」…聞いたことない言葉かもしれません。なぜなら2011年にこの本の著者・淀川テクニックさんが生み出した言葉だからです。でも、日本新聞協会主催でのコンテストも開かれるなど知る人ぞ知るジャンルになっているようです。
コラージュ川柳とは、新聞や広告、雑誌など身の回りの印刷物から五文字と七文字の言葉を切り抜き、それらを五七五と三枚合わせて川柳を詠む、というもの。
この本には、著者がこれまでつくってきた「名作」をはじめ多数の「作品」が掲載されています。
「作品」とは、つまり切り抜きの写真になるわけですが、著者本人によると「昔のドラマに出てきた脅迫状みたいな感じ」だそうです(たしかに~)。切り取った言葉から組み合わせるからでしょうか、作者も思いもよらない作品になっているのではないかと思えます。思い立ったら誰でも今すぐできる、というのも良いなと思いました(作り方も掲載されています)。
 さて今回この本をPickupした理由は、その斬新な手法に惹かれる前に、著者淀川テクニックさんが、あの「真庭のシシ」等を作成した現代美術家であり、真庭市出身だからなのでした。面白さにかけても偉大な方です!
(久世図書館・N)

ヒルビリー・エレジー

ヒルビリー・エレジー

著者: J・D・ヴァンス/作

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あるかな
アメリカ大統領選挙がテレビや新聞、YouTubeなどで盛んに取り上げられていますね。共和党の副大統領候補となったJ・D・ヴァンスはラストベルト出身ということが注目されています。作家として自伝を出版していると知り、読んでみたくなりました。
さっそくネットで書名『ヒルビリー・エレジー』と検索すると、Amazonでは2017年発行の単行本は中古本しかなく、高値で売られています。注目度の高さを感じつつ、真庭市立図書館ホームページに移動します。キーワード検索に書名を入力して、あるかな、とどきどきしながらエンターキーを押すと、ありました。2018年に中央図書館が購入していました。心の中でガッツポーズする瞬間です。貸し出し中だったので予約を入れ、返却されるのを待ちます。2週間ほど経つと、本を手に取ることができました。
この本は、ラストベルトと呼ばれる米国中西部で育った著者が、貧しい白人が大多数を占める地方の人々の暮らしや価値観を描いています。ラストベルトに暮らす人が、オバマ元大統領とトランプ前大統領へそれぞれどんな感情を持つか書かれている箇所が印象的でした。
たくさんの情報が溢れる世の中、あなたの読みたい本はもう決まっているかもしれません。まずはその本が図書館にあるか検索してみてください。
(美甘図書館・かも)

ダレン・シャン 奇怪なサーカス

ダレン・シャン 奇怪なサーカス

著者: ダレンシャン/作

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これはぼくが体験した本当のお話
私が人生で初めてハマった長編作品が、こちらの『ダレン・シャンシリーズ』。今でもストーリーを思い出せるくらいに大好きな作品だ。
物語はごく普通の学校生活から始まる。主人公のダレン・シャンは、異形サーカスの公演を見た夜、正体不明のバンパイアと取引をすることになる。それは、トラブルで命の危機に面した親友を救うためだったが、後に世界を巻き込む大きな選択となる。

人間離れしたキャラクターが登場するたびに、頭ではフィクションだと理解しているが、「もしかしてこれは現実に起こっていることなのでは?」 と思わせるその深い世界観に、少女ノサミは心を奪われたのである。また本シリーズでは、登場人物の姿は表紙や挿絵で一切描かれてない。作中で言及される特徴を基に、一人一人の顔を想像しながら物語を読み進めていくのも、楽しみの1つだった。
ちなみに物語は全12巻で構成されている。最初は小学校の図書室で借りて読んでいたが、次第に入荷が待ちきれず、最後の3冊は発売されてすぐに本屋で買ったのを覚えている。
小学生には1回に1,000円を超える出費はなかなか大きな買い物だったが、今でもその3冊は当時の思い出が詰まった大事な宝物だ。
(湯原図書館・ノサミ)

古生物の飼い方

古生物の飼い方

著者: 土屋健/作

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みなさんにも推しの古生物はいますか?
私の推しはやっぱり、カンブリア紀の生物「オパビニア」です。
出会いは高校時代の生物の教科書でした。
なんとなくパラパラとめくっていたら目に飛び込んできた摩訶不思議な造形の生物。
たくさんの目。なぞの触手。この見た目で手のひらに乗る大きさというサイズ感。

世が世なら絶対飼うのに……。
そんなままならない想いを受け止めてくれたのがこの本。古生代の生き物の「飼い方」を真面目に解説しています。
ちなみにオパビニアの飼いやすさは★7。飼育向きですね。
みんな大好きアノマロカリス類はほぼ★2~5みたいですが、飼いやすい種類もいるみたいなので諦めないでくださいね。
(蒜山図書館・888)

アンペルマン 東ドイツ生まれの人気キャラクター

アンペルマン 東ドイツ生まれの人気キャラクター

著者: 高橋徹/作

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街角の歴史
「アンペルマン」って何?子どもたちに大人気の絵本に似たような名前のキャラクターがいた気がするけど…。その程度の気持ちで読んでみました。結論だけ先に言うと、彼は旧東ドイツで使われていた歩行者用信号標識のキャラクターなのです。日本でも知る人ぞ知る存在で、キャラクターグッズもたくさん売り出されています(全然知らなかった!)。この本は、彼の誕生と、東西再統一後に西ドイツの信号に統一されそうになるという絶滅の危機、そしてそこからの復活劇、となかなかにドラマティックな歴史を当時の写真とともに紹介しています。そして、そんな彼らの物語を通じて今では遠い記憶になった〈東ドイツ〉という国のことも描かれているのです。深く考えずに手に取ったものの、思わず話が大きくなった気がして少し戸惑いもしましたが、おしゃれな帽子をかぶり、こちらに話しかけてくるような妙に人間臭いデザインのこのキャラクターが、危機を乗り越えて今でも街角の安全を担っている。そのけなげな物語と、彼を守り通したドイツの人たちの在り様にほっこりしました。本書では、彼以外の信号機キャラクターも紹介されていて、それぞれ時代やら文化やら便宜やらの背景があるのだろうなあと想像しました。図書館の棚にあっても、なかなか手を出そうとは思われない内容とは思いますが、遠い異国の街角の歴史にちょっと思いを馳せてみるのはどうでしょうか。
( 中央図書館・だいず )

銀の匙

銀の匙

著者: 荒川弘/作

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チーズだけど豆腐、豆腐だけどチーズ
私の家では昔から牛を飼っている。
ここ十数年は肉用牛の黒毛和種を育てているが、私が高校生の頃までは乳用牛のジャージー種やホルスタイン種を飼っていた。
記憶にあるのは家庭科の授業で「自分で作った料理を紹介しよう」という宿題が出されたこと。
他の人とは違うものを作りたい偏屈な私である。
その時こちらのマンガに登場するフレッシュチーズを参考に、うちで絞った牛乳でチーズを作ってみようと思い立った。
フレッシュタイプのチーズであれば熟成期間の必要なチーズと違い、比較的短時間でできるし、カッテージチーズなら材料も牛乳とレモン汁のみ。熱して混ぜて固めるだけ。
いざ作って食べてみた。
「美味いけどなんとなく食べたことある味よなぁ」と妹と話すと、すぐに答えが出た。
「ああ、牛乳豆腐じゃろ」と。
分娩後の牛が出す初乳は通常よりも濃厚で栄養価がとても高いが、加熱殺菌処理で固まってしまうおそれがあり出荷できない。
そこでうちでは酢を混ぜて固めた牛乳豆腐を作り、醤油とかつお節をかけて食べていたのである。(酪農家の間では結構メジャーなまかない食らしい)
レモン汁と酢、風味や食感は少し異なるが、知らず知らずのうちにほぼ同じものを作っていたとは…。
現在は牛乳を出荷していないので、カッテージチーズもとい牛乳豆腐を作ることは無くなったが、この作品を読むと当時の少し残念だが美味しかった思い出がよみがえる。
(中央図書館・みーやん)

*8巻に書影がなかったため、書影と詳細情報は9巻を表示しています。フレッシュチーズをつくっているのは8巻(ISBN 978-4-09-124346-1)になります。

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