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銀の匙

銀の匙

著者: 荒川弘/作

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チーズだけど豆腐、豆腐だけどチーズ
私の家では昔から牛を飼っている。
ここ十数年は肉用牛の黒毛和種を育てているが、私が高校生の頃までは乳用牛のジャージー種やホルスタイン種を飼っていた。
記憶にあるのは家庭科の授業で「自分で作った料理を紹介しよう」という宿題が出されたこと。
他の人とは違うものを作りたい偏屈な私である。
その時こちらのマンガに登場するフレッシュチーズを参考に、うちで絞った牛乳でチーズを作ってみようと思い立った。
フレッシュタイプのチーズであれば熟成期間の必要なチーズと違い、比較的短時間でできるし、カッテージチーズなら材料も牛乳とレモン汁のみ。熱して混ぜて固めるだけ。
いざ作って食べてみた。
「美味いけどなんとなく食べたことある味よなぁ」と妹と話すと、すぐに答えが出た。
「ああ、牛乳豆腐じゃろ」と。
分娩後の牛が出す初乳は通常よりも濃厚で栄養価がとても高いが、加熱殺菌処理で固まってしまうおそれがあり出荷できない。
そこでうちでは酢を混ぜて固めた牛乳豆腐を作り、醤油とかつお節をかけて食べていたのである。(酪農家の間では結構メジャーなまかない食らしい)
レモン汁と酢、風味や食感は少し異なるが、知らず知らずのうちにほぼ同じものを作っていたとは…。
現在は牛乳を出荷していないので、カッテージチーズもとい牛乳豆腐を作ることは無くなったが、この作品を読むと当時の少し残念だが美味しかった思い出がよみがえる。
(中央図書館・みーやん)

*8巻に書影がなかったため、書影と詳細情報は9巻を表示しています。フレッシュチーズをつくっているのは8巻(ISBN 978-4-09-124346-1)になります。

2時間ドラマ40年の軌跡

2時間ドラマ40年の軌跡

著者: 大野茂/作

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2時間ドラマと共に
何を隠そう私はなかなかの2時間サスペンスドラマ通(好き)である。
皆さんもご存知であろう図書館でも根強い人気の西村京太郎『十津川警部
シリーズ』を筆頭に、内田康夫の『浅見光彦シリーズ』はもちろん『法医学教室の事件ファイル』や『監察医・室生亜季子』などの医療系もウェルカムである。新聞のラテ欄で『火曜サスペンス劇場』や『土曜ワイド劇場』の
タイトルを見てはちょっとドキドキしていたあの頃。何度も再放送されあらすじも犯人も分かっているのに毎回感情移入する。2時間ドラマの帝王F越A一郎は少し苦手なのだが、その熱い走りは年齢を感じさせない。
そして目にとまったのがこの本である。なるほど、昭和の時代ならではの撮影時の苦労話や豪快伝説、音楽へのこだわり…民放ドラマの三悪人と言われし男たちがいかにB級エンタメを作り上げたのか…そんな業界の裏話が座談会で繰り広げられている。私が単純にすごいと思ったのは、あるプロデューサーがドラマの原作探しのために10年で2000冊の本を読み、43歳で老眼になりながらもいち早くコレだ!という作品を見抜く力を養っていたこと。当時はまだ完結していなかった宮部みゆきの小説『火車』をドラマ化したのもそのうちの一つであったという。
そんな話が詰まったこの本、巻末には「長~いサブタイトルランキング」が
掲載されていてドラマ通をうならせてくれる。

しかしそんな私が今ハマっているのはサスペンスでもミステリでもなく
『暴れん坊将軍』なのである。
(中央図書館・ヨラコ)

子どもが納得!高学年の叱り方・ほめ方

子どもが納得!高学年の叱り方・ほめ方

著者: 中嶋郁雄/作

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難しいのは年頃のせい?
図書館で働いていると、子どもたちと関わることが多い日常。

子育て関係や保育の本はよく読んできた方だと思うが、1番難しいとされる小学校高学年との関わり方の本は読んだことがない。
新着本の棚から、なんとなく手に取ってみたこちらの本。
タイトルのように、叱ったりほめたりしようと思っているわけではないよ、高学年ってどんな感じか知りたいだけだよと思いながら中を見てみると・・・
高学年ってこんなふうに感じる年頃なんだよ、こんなことを気にしはじめたり、こんなことを認めてほしかったりするんだよ、こういった態度は信頼されないよ。ということが先生向けではあるけれど書かれていて、「へ~!勉強になりますなあ!少し知っていると知らないじゃ、子どもたちとの接し方が違ってくるかも」と勉強になった。

だんだん読んでいると気づいたのが、私(アラフォーの年頃)と高学年女子の気持ち一緒じゃね?
人って基本12歳頃から変わらないのか、それは私だけなのか。
内側からにじみでる若さってことでオッケーですか?

(中央図書館・あいすろいみ)

木を植えた男

木を植えた男

著者: ジャン・ジオノ/作

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何かに突き動かされる
世界中が戦争をしていた時代に荒れ果てた大地にただひたすらに孤独の中で木を植え続けたおじいさんのものがたり。

とても綺麗な作画に、朗読するようにものがたりが紡がれます。

「どんな大成功のかげにも、逆境にうちかつ苦労があり、どんなに激しい情熱をかたむけようと、勝利を確実にするためにはときに、絶望とたたかわなくてはならぬことを。」
この一文に本書の全てが現れていると感じます。

私はゴールが見えない状態でもがいているとき、この絵本のことを思い出すことがよくあります。

そうすると急に、考えたってしょうがない!と心が動き一歩踏み出せる。
私にとって背中を押してくれる大切な一冊。

以前、ピックアップで紹介した「つみきのいえ」同様に短編アニメーションが原作となっています。
1988年アカデミー賞 短編アニメーション部門受賞作した作品。
三國連太郎さんが声を入れているそれは朗読もあいまって荘厳な雰囲気で心洗われるようなアニメです。
機会があればぜひ。
(中央図書館・イミ)

地球の歩き方

地球の歩き方

著者: 地球の歩き方編集室/作

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名は体を表す
私は旅行が大好きで計画を立てるだけでも満足してしまいます。
そんな私が海外に出かける時には必ず購入しているシリーズです。
自宅の書棚にはこれまで渡航先の「地球の歩き方」が並んでいますが、
少しずつ書棚が埋まっていくのを眺めていると少し嬉しくなってしまいます。
他のガイド本は観光スポットやグルメとお土産情報等が大部分を占めているものが多いですが、
このシリーズはその国の文化や歴史等も丁寧に書かれているとこが気に入ってます。
「名は体を表す」ではないですが、この本を片手に地球を歩くことができると信じています。
ただ、私の場合は内容以上に書名が気に入ってます。ジャケ買いではないですが書名買いしてしまいます。
コロナ禍で外出が控えられたこともあり、近頃は国内版も発売されています。
国内外を問わず旅行を計画されている皆さん、旅行の計画をされていない皆さんも是非手に取ってみてください。
(中央図書館 SHITUCYO)

しつもん100

しつもん100

著者: tupera tupera/作

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旅の醍醐味は道中にあり。
娘が小学生の頃、私の実家まで鈍行で11時間かかって帰ったりしていました。
長い道中、車内での定番ひまつぶしは以下の3つ。
①しりとり(いつまでやるんだっていうほどやってた)
②絵しりとり(いつまでやるんだっていうほどやってた)
③窓から見えるものを言うだけのゲーム(同じものを言ってはいけない。外をめちゃくちゃよく観察することにはなる)
光陰矢の如し。娘たちもさっさと大きくなって、一緒に移動することもなくなりました。あのころの車中の不要不急の会話が懐かしい。
旅の醍醐味は道中にあり。
つぶすひまは持ちたいものだと、新幹線ばっかり乗ってる最近の私は思うのでした。

というわけで、この本が当時あったらぜったいこれでひまをつぶしていたに違いないという一冊。
100個のシンプルな問いが書いてあります。
「すきなもの さいしょにたべる? さいごにたべる?」
「ザバーン!!うみからなにがでてきたと思う?」
「あつめているものは なに?」……
順番に問いこたえて、「私はあーだ」「私はこーだ」と話せます。
さすが tuperatupera さん。絵も楽しい。
お盆も近い。
帰省に、旅のおともに、ちょっとした「問い」はいかがですか。

追記:
実は中央図書館のニュースレター『Biblioteca』では、毎月、司書の紹介をこの本の問いをお借りしてやっています。問いの向こうに見える人柄。
バックナンバーぜひご覧くださいませ。
ホームページの一番下の「図書館だより」→「中央図書館」にあります。
全員が共通して答えている問いは「ほかほかごはんになにのせる?」です。
あなたなら何をのせますか?
(中央図書館・KANCHO)

ドーナツを穴だけ残して食べる方法

ドーナツを穴だけ残して食べる方法

著者: 大阪大学ショセキカプロジェクト/作

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図書館員ならどうやって食べるか
10年前この本が出版された時、気になりすぎるタイトルと柔らかくて美味しそうなドーナツの写真に惹かれて手に取りました。
ところが内容は見た目と違って硬そうで、数式も登場している、これはちょっと手に負えそうにないわーと本棚に戻したのでした。
今年に入って、排架(“ハイカ“。図書館では、本を棚に戻すことをこう呼ぶ)のために本棚の前を通るたびに目に入るのです、この本が。
目に飛び込んでくる背表紙の黄色い文字。そんなにアピールされてもなぁ、と思っていたのですが、このたび晴れて?いや、根負けして?読んでみることにしました。
 
すると、おもしろかったのですよ、これが。
「ドーナツを穴だけ残して食べるには?」という学生たちの問いを、大学の工学、応用化学、人類学、経済学、法学、数学など各々の専門分野の先生方が考え、論じていかれるのです。 
たとえば、工学研究科の先生がドーナツを旋盤加工で切ったり削ったりするガチなアプローチを考え、理学研究科数学専攻の先生は、我々が4次元空間の中に住んでいるとして…との論理的トリックを持ち出し、法学の先生は「ドーナツ事件」というドーナツ型クッションに係る商標権侵害訴訟の話から「輪形以外の形状のドーナツを想定する」ことで解決方法を模索し(先生曰く「詭弁を弄」し)たり、応用化学の先生がドーナツのような形をした環状オリゴ糖の話を始めたり。

先生方の使う言葉はだいたいが難解で、何のことやらまるで分からないところもたくさん。でも誰一人「穴だけ残して食べるなんて無理に決まっている」とは言わず、「うちの学問分野だとこう考えられるね」と真剣に、かつ、楽しそうに説明されるので気になりません。
学問って自由なのだ!と、すがすがしい気持ちになりました。

(中央図書館・くろ )

文鳥・夢十夜

文鳥・夢十夜

著者: 夏目漱石/作

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見る
もうすぐスターウィーク。
蒜山は星々の輝きに抱かれます。
月のない夜、
星ひとつひとつの鮮やかな色が見えます。

見る。

心が動く。

見えているものの魅力に慣れてくると、
見えないものも見たい…とゆう気持ちになります。

情報と共に見る。

道具を使って見る。

様々な手段により、
見れば見るほど、
見えないものの多さに気づき、

気配を感じながら、
どうしても見えないものに、
さみしさを感じます。

そんな気持ちになったとき、
夏目漱石の「文鳥」を読むことにしています。

記録のように淡々と過ぎる日常。
羽根の毛一本さえ逃さない詳細な文鳥の様子。

見えるけど、近づけないこと。

見えないものの気配と共に在ること。

理解・解決とゆう言葉を虚無しく感じることと出会い、
本を閉じるころ、
やわらかな静けさに包まれます。
(蒜山図書館・下午)

わたしが一番きれいだったとき  豊かなことば現代日本の詩 7

わたしが一番きれいだったとき  豊かなことば現代日本の詩 7

著者: 茨木のり子/作

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そうだったんだ
若い頃からずっと、私は、長~い小説が大好きで、詩には全く興味がありませんでした。
詩って短い。短い言葉では気持ちが伝わらない、というイメージしかもっていませんでした。
でも、最近、若い女性に茨木のり子の詩が人気だと知って、先日、はじめて茨木のり子の詩集を読んでみました。
そしたら、そのかっこ良いこと!
詩のイメージが一変しました。
話し言葉に近く読みやすい。反復法など表現のおもしろさもある。
これなら短くても思いは伝わるのだと思った。

そんなわけで、思わず茨木のり子の魅力にはまってしまいました。
この本には、茨木のり子の代表作37編が収められています。
中でも私のお気に入りはやっぱり「倚りかからず」と「自分の感受性くらい」です。
私も、この詩のように、何にも倚りかからず、自分の感性を信じて生きていきたい!
……けど、人の意見に流されやすい私には難しい……かなあ
(久世図書館・KAONITA)

永瀬清子詩集

永瀬清子詩集

著者: 永瀬清子、 谷川俊太郎/作

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心配する生き物、それは母
永瀬清子は岡山県出身の詩人である、という事は知ってはいたが、作品を読んだことはなかった。
そもそも私は「詩」が苦手だ。
作者のこころの内をこっそりのぞき込んでいるようで、秘密の日記を読んでいるようで、ソワソワしてしまう。
それでもこの詩集を読んでみたきっかけは、母に勧められたからなのだが、理由はこうだ。
「永瀬清子はあんたと同じ誕生日よ。読んでみたら?」
母は決して占いの類を信じるような人ではないが、誕生日が同じという点において、何か感じるものがあったらしい。
母の助言に従って開いたこの本の中で、「母の心配」という詩が目に留まった。私も母であり、今まさに息子が心配の種であるため、読んでみると共感ハンパない。
待てよ、私の母は息子を心配する私を心配して敢えてこの本を読ませたのか?
母を鬱陶しく思っている息子よ、母ってこんなもの。
いつもいつまでも子どもの事を心配して生きている。
(北房図書館・はにわ)

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