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GIFTED

GIFTED

著者: 小野伸二/作

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カーテンを開ける
人生で一度だけJリーグを観戦したことがある(というか一度しかない)。
そこで素人目でも、まったく違うレベル、とわかる選手がいた。
かっこいい……ため息が出た。
小野伸二選手だった。
浦和レッズに入団したての18歳。少年の面影を残していた。

この本には、伸二少年がサッカーと出会った頃の喜びが綴られている。
日曜日には試合があった。朝、自室のカーテンを開け、晴れだったら「今日も試合ができる!!」と狂喜したという。

そして、最近の子どもたちが少し気になる、と次のようにいう。

「ときどき思うのは、今の子はちょっと教えられすぎじゃないかな、ということ。(中略)いろいろなトレーニングをして、いろんなスクールに通って、さまざまな指導者に教えてもらうことは確かにレベルアップにつながるんだろうな、と思う。
でも、どこかやりすぎ、教えられすぎな気がしている。
あの、ドキドキしながらカーテンを開けるときの気持ちを知らないんじゃないだろうか、って。」

英語では、スポーツも、音楽も、演劇も、すべてPLAYするもの。つまりは遊びだ。

先の東京五輪のスケートボードの選手たちを思い出す。
国など関係なく、新しい技=試み・冒険をした選手を称えあい、抱き合っていた。
まるでまちのストリートで遊んでいるかのようだった。
競技自体がまだ若いから遊びでいられるのだろうか。

いま、子どものスポーツの傍らには必ず大人がいる。
指導の名のもと、結果を残すことばかりに気をとられ、遊びの時間(自分の時間)でなくなってはいないだろうか。
カーテンを開ける喜びを保障してあげられているだろうか。
(中央図書館 KANCHO)


つみきのいえ

つみきのいえ

著者: 平田研也/作

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オレンジ色のプール
この絵本を読むたびに、思い出す風景があります。

中高生の時、私は水泳部でした。日暮れどき、肺の空気をふーっと出し切ってプールの底に沈み、そこから水ごしに空を見上げるのが練習後の楽しみでした。夕焼けが水の中で歪んで見えて、広いプールがオレンジ色に染まり、見たこともないほどきれいでした。

この本にも、水辺の風景とおじいさんの家が、不思議なタッチで描かれています。
おじいさんの記憶を追体験しているようなノスタルジックな気持ちになります。

若い時に読みましたが、年を重ねても読むたびに読後感が変わっていきます。
大人の方にもぜひ。

*絵本より先に発表されたショートアニメ(アカデミー賞短編アニメーション部門等を受賞)もオススメです。
(中央図書館 いみ)

サウスポイント

サウスポイント

著者: よしもとばなな/作

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ある岬の記憶について。
『本は読めないものだから心配するな』という印象的なタイトルの本があります。下北沢のビールが飲める書店へ堀江敏幸さんのトークイベントに出かけた時に一目惚れで購入。ここに、すぐれた仏文学者であり大江健三郎の師匠だった渡辺一夫氏ですら、初めて読むと思っていた本が実は昔読んだ本だったことから、「読まないのと全く同じ結果になっていた…」と語ったとのエピソードが出てきます。いわんや凡人をや。
さてところで今回紹介するのはこの本ではなく、ここでタイトルに使った言葉によりこの本で紹介されている吉本ばななの『サウスポイント』。サウスポイントとは、ハワイ島では「ラ・カエ(=岬)」と呼ばれる岬のこと。死者と生者が混在するいろんな意味でなんとも切ない物語なのでした。そしてわたしは現地の言葉でただ「岬」と呼ばれる場所に行ってみたくなり出かけて行ったのでした、が、時は2018年、この年のハワイ島といえば…。
吉本ばななというと「ムーンライトシャドウ」も好きだな(映画化されましたね、観てないけど)、泣ける。
(中央図書館 くろ)

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